夙川教会信徒によるカテキズム勉強会例会報告（第四回）

2010年6月25日

例会報告（第四回）

開催日：2010年5月23日
報告対象：設問163から設問166まで
報告者：水口隆司
　

エキュメニズムについて

五月度のカテキズム勉強会で話題になったのは、コンペンディウム１６２番の「キリストの唯一の教会はどこに存在しますか。」との設問からスタートして、１６３番「カトリック教会に属さないキリスト者をどのように受け止めればよいでしょうか。」１６４番「キリスト者の一致のためにどのように取り組むべきでしょうか。」との各々について活発な討論が交わされました。

１６２番の問いに対してコンペンディウムは、「このカトリック教会を通してのみ、救いの諸手段を十分に得ることができます」と答えているのですが、私はここにカトリックの上から目線を感じてしまいます。カトリック以外の人々も敏感に感じるとことだと思います。第２バチカン公会議の公文書全集には、「教会一致の為の活動は、完全に誠実にカトリック的なもの以外にはありえないからである。（Ｐ１２７）」と記されていますが、この文章も個人により受け止め方に差があるでしょう。
また、１６３番、１６４番に関して、諸教会とは東西に分裂した東方教会のことであり、諸教団とは宗教改革により分離したプロテスタント諸教団のことである、との定義も私にとっては新鮮でした。カトリック教会が各々に対する姿勢にも微妙な違いがあり、東方教会に対しては、より親しみを抱いているような気がしました。プロテスタントに対しては、分離したのが最近（とは言っても数百年前のことですが）であり、地域的にも混在するところが多く政治と一体となった対立が続いたため、ヨーロッパでは日本で思う以上に目に見えない溝があるような気がします。日本ではともに明治以降に本格的に布教されたため、本来ならばそのような感情は存在しないはずですが、各々の母体の歴史的影響を受けて様々な相違が見受けられます。

   私たちは今、エキュメニズムという言葉を知り、相互理解、教会の一致に向かって歩みだそうとしています。第２バチカン公会議の決定を受けてカトリック教会でもプロテスタント教会に対して対話の門を開こうとしていますが、私たちはその姿をはっきりと見ることはできません。古くからの信者の方は、「カトリック教会も今までとはかなり変わりました。昔と比べてずいぶん自由になりました。」と言っておられ、教会としての歩み寄りがみられるようです。しかし、コンペンディウムの文言にはカトリックが正統であり、「我々の立場に戻ってくるべきだ」との表現があります。カトリック・プロテスタント各々に正統性を主張していますが、私は教義などを比べれば、叙階の秘儀、使徒継承などカトリック教会の中に連続性が脈々と存在していると考えます。
   日々の信仰についても、カトリック教会には汚れなき聖母マリアに対する豊かな信仰があります。キリストの母であり教会の母である聖母マリアに対する憧れと崇拝。死を迎える時にとりなしてくださる聖母マリアに対するゆるぎなき信頼。私たちの教会に聖母マリアがいらっしゃることにより、限りない心からの安らぎを得ることができます。古代教会でモザイクタイルで表現されていた頃から、ダ・ヴィンチ、ラファエロ、カラヴァッジョオ、そして名もない作家の作品であっても、信仰に裏打ちされたいろいろなマリア像を教会で街中で見ることができます。ある時は幼子イエスを抱き、またある時は我々をマントで庇護して神のもとに導いてくださいます。私たちはそのような豊かな信仰の世界に生きているのです。さらにはサンチャゴ・デス・コンポーラやルルドに代表される巡礼の聖地。そしてアシッジのフランチェスコやマザー・テレサなどの聖人たち。私たちには多くの信仰の拠所となるものがあります。　
   私たちがこれらの物を大切にして、キリスト者としての自覚を持ち、キリストを頭に一つの体を構成しているとの思いを大切にすることは、相互理解に対する基本姿勢になるでしょう。

   しかし残念な事に、私たちは東方教会やプロテスタント教会のことをあまり詳しくは知りません。プロテスタントの教会を目にする機会は多々ありますが、東方教会はほとんど目にすることはなく、ましてや教義や祭儀については全く知らないといってよいでしょう。
   もし私たちが東方教会やプロテスタント教会のミサや礼拝にあずかることになれば、少なからず違和感を抱くことになるでしょう。私たちがカトリックの信者であるということはカトリックの信仰を自発的に選んだということなのです。そして強固な信仰を持つということは、結果的に他の信仰を排除していることになるのです。
   これと同じようなことをプロテスタント教会の人々も感じると思います。しかしカトリック教会で話題になっているほどには、プロテスタント教会では温度差があってそれほど話題になってるような気がしません。カトリックからの呼び掛けに対して、プロテスタント側の反応はどのようなものなのでしょうか。
   「体は一つ、霊は一つです。 ── 主は一人、信仰は一つ、すべての物の父である神は唯一であって ── 」（エフェソの信徒への手紙　４章４節以下）の言葉のように、私たちはキリストによって一つの家族になることを期待されているのです。これはすべてのキリスト者にとって、非常に重要なメッセージではないでしょうか。

神に感謝